2012年2月29日水曜日

給与の差押えと破産・個人再生

債務整理受任時に、債権者から給与が差し押さえられている場合があります。
破産や個人再生を予定しているのであれば、給与を差押えから解放するために、とにかく早く申立てて開始決定を得る必要があります。
以下、それぞれの手続で給与の差押えがどのようになるかを見てみます。


破産管財手続の場合は、開始決定によって差押えは失効します(破産法42条2項本文。「破産管財実践マニュアル」82頁)。
それ以後の給与については、破産者が全額を受け取ることができます。


これに対して、同じ破産でも同時廃止の場合は、開始決定時には差押えは中止となるだけで(同法249条1項)、失効するのは免責決定確定した時です(同条2項)。
このため、開始決定がでれば、差し押さえられている給与の部分について、差押債権者が勤務先から回収することはできなくなりますが、破産者がすぐに差押相当額を受け取れるわけではなく、勤務先がプールし続けることになります。
そして、免責決定が確定した時点で、破産者は勤務先からプールされていた部分を受け取ることができるようになり、以後は差押えがない状態に戻って給与全額を受け取れます。

これは、開始決定によって生じた失効の効力が同時に消滅するので、結局、開始決定だけでは差押えが効力を失わないからです。
このため、旧法下では、同時廃止から免責決定の確定までの間の強制執行が許されるとされていました(最判平成2年3月20日最高裁判所民事判例集44巻2号416頁)。
破産法249条1項は、このような不都合を回避するために設けられた規定です。


次に、個人再生の場合ですが、これも同時廃止と同じような推移をたどります。
まず、開始決定で差押えは中止となり(民事再生法39条1項)、再生計画認可決定確定失効します(同法184条)。
つまり、開始決定がでても、(あとでまとめてもらえるとはいえ)認可決定の確定までは給与全額を受け取れないということですね。
ただし、給与全額の支払いがなければ再生に支障を来す場合は、裁判所に申し立てることで、強制執行の取消しも可能です(同法39条2項)。無担保で発令されることが通常のようです。

なお、破産、個人再生とも、申立後開始決定前の中止命令の制度があります(破産法24条1項1号、民事再生法31条1項)。
特に個人再生では、申し立ててから開始決定までに時間がかかることもありますので、これらの申立てをしたくなるところですが、むしろ裁判所に早期の開始決定を促す方が実用的でしょう。

2012年2月26日日曜日

『提言 倒産法改正』ができるまで

新宅さん紹介の倒産法改正研究会編『提言 倒産法改正』(金融財政事情研究会)ができるまでを少し書いておきます。
倒産法制の立法が終わり、落ち着いたかに見えてはいますが、実際の現場では、不都合な点が多々あり、解釈や運用による対処だけでなく、見直しが必要と感じていました。
また、債権法改正の議論が進む中、倒産の場面の検討は別途倒産法でやってください、といった話が多く出てきました(すごく疑問ですね。)。
そんな中、昨年4月、やはり倒産処理弁護士から発信すべきと思いたち、友人に呼びかけ、5月の準備会を経て、6月には出版社にもご理解いただき、研究の成果を出版していただけることになりました。特に、7月、8月に集中して研究会を開催し、9月末の初稿締切りを厳守し(私の原稿の取立ては特に厳しい・・・)、その後も論文の検討会を行い、めでたくこの度の出版となりました。
発案したものが具体的な成果物(本)となるのはうれしいですね!
3月19日には、東弁倒産法部と共催で倒産法改正シンポを行います。
実際の倒産法改正までは長い道のりになるとは思いますが、まずは、第2弾を考えています。

2012年2月25日土曜日

リゾートマンションの売却


破産財団にリゾートマンションがあり、管財人として任意売却を試みるケースがあります。
私が昨年の夏に受任した管財事件でも、新潟県のスキー場の近くにあるリゾートマンションがありました。
いつも声をかけている東京や千葉の不動産会社に情報提供しましたが、遠方なので動きが良くありません。
そこで、管理組合に連絡して、当該物件を良く扱っている地元の不動産会社を教えてもらい、仲介の依頼をしました。
しかし、仲介業者からは「スキー場に雪が降り始めないと物件は動かないと思いますよ」と言われました。確かに、雪が降るまで全く打診がありませんでした。
ところで、リゾートマンションは管理費が滞納していることが多く、しかも、この管理費は通常の居住用マンションと比較して高額であることが普通です。
そのため物件を売却するために滞納管理費を減免しないと買受人を探すことが困難なケースがあります。
この場合、滞納管理費を減免するには総会の決議が必要となります。
そして、管理組合の定期総会は年に1回です。リゾートマンションの組合員は外部居住者であることが多く臨時総会を開くことは困難です。
そこで、滞納管理費を減免する必要がある場合は、定期総会の時期も念頭に置いて売却を進める必要があります。
売買の時期や条件が未定であれば、減免の時期や金額等を判断する権限を理事長(理事会)に委任することを決議しておけば良いと思います。
余談ですが、リゾートマンションは施設に温泉が引いてあるか否かで、売れ行きに違いが生じると仲介業者の方が言っていました。スキーをしたい若者が買うのだから、温泉なんて関係のではと思ったのですが、スキー場近くのリゾートマンションは若い人よりも、会社をリタイアして、時間的にも経済的にも余裕のある高齢者の方が買うことが多いからだということです。

2012年2月24日金曜日

「提言 倒産法改正」出版

野村、新宅が執筆にかかわった「提言 倒産法改正」がきんざいから出版されました。
東京弁護士会も「倒産法改正展望」を出版します。

3月にはシンポジウムが開催される予定です。

2012年2月23日木曜日

宛名ラベル

通常の弁護士業務でもそうですが、管財事件では宛名ラベルを作成することが輪をかけて多いといえます。

我が事務所では、BrotherのPL-550が活躍中です。
SDKも公開されていますので、Excelでマクロを組んで利用しています。

と、この記事を書くためにBrotherのHPをみると、いろいろ新機種が出てるんですね。
欲しくなってしまいそうですので、深入りせずにさっさと筆を置きます。

2012年2月22日水曜日

財団から放棄された不動産の滞納管理費

管財事件では不動産の任意売却に努めますが、いろいろな事情により売却できず、最終的に財団から放棄することがあります。

この場合、不動産の管理処分権は、破産者に復帰します。
そして、抵当権者は、破産者を相手方として競売手続を行います(自然人であれば破産者本人が相手方。法人であれば特別代理人を選任。)。

不動産がマンションの場合、財団から放棄後も滞納管理費が生じ続けます。
競落人は、財団放棄後の滞納管理費を含む一切の滞納管理費の支払義務を承継し(区分所有法8条)、これを支払うことになります。

滞納管理費を支払った競落人が破産者(自然人)に求償できるか、という点について判断した東京高裁平成23年11月16日判決(上告審)が、判例時報2135号に掲載されていました。

  1. 破産手続開始決定前の滞納管理費についての求償権は、破産債権なので免責求償できない
  2. 破産手続開始決定後財団放棄までの滞納管理費についての求償権は、破産法148条1項2号の財団債権であり、破産者は弁済義務を負わない。求償できない
  3. 財団放棄後の滞納管理費についての求償権は、破産者が責任を負わないとする法律上の根拠がない。また、信義則違反または権利濫用にもあたらない。求償できる
1,2は当然として、3は厳しいですね。

早期に売却すればそれだけ管理費の負担は減ります。
しかし、管財人が売却できずに競売になっている物件を早期売却することは容易ではないでしょう。
また、そもそもこの事案がそうであったように、破産者は、任意売却に協力するために退去していることがほとんどで、実際にマンションを利用しているわけではありません。
にもかかわらず、管理費だけは負担し続けなければならなくなります。
せっかく免責を得てリフレッシュスタートを切ったというのに、不要な支出を強いられるといえます。

判決も指摘するように、立法による解決が必要なところかもしれません。
同様の問題は、放棄された不動産の固定資産税についても指摘することができます。

2012年2月21日火曜日

ファイル名変換

業務をしていると、大量のファイル名を変換する必要が生じる場合があります。
私は、そんなとき、Flexible Renamerというソフトを利用しています。

正規表現はもちろん、さらに複雑なスクリプトも利用できるので、重宝しています。

2012年2月20日月曜日

破産管財人等協議会


2月17日に前橋地方裁判所で行われた管財人等協議会に外部講師として参加してきました。
申立代理人と破産管財人の連携というテーマで90分ほど講演をして、その後、裁判所と弁護士会の協議にもオブザーバーとして参加させていただきました。
このテーマを取り上げたのは、申立代理人と破産管財人との連携が上手くいかずに手続の進行に支障が生じているケースがあることを聞き、また、私自身も体験したことがあるからです。
申立代理人は破産管財人の視点を忘れずに、破産管財人も申立代理人の立場を理解して業務を行うことの重要性と申立代理人と管財人との間で齟齬が生じやすい点を説明させてもらいました。
協議会の議題も盛りだくさんでした。中でも、倒産処理にかかわる税務の問題と管財人の(質も含めた)給源確保は千葉でも前橋でも共通する関心事のようです。
管財業務のマニュアルを裁判所と弁護士会の共同で作成したらどうかという提案もされていました。是非とも裁判所と群馬弁護士会で積極的な議論をして、より良いマニュアルが完成することを祈っております。
協議会の後には懇親会の場も設けていただき、裁判官、書記官の方、群馬弁護士会の先生方と楽しい時間を過ごさせてもらいました。
若い書記官の方から「最近初めて破産事件を担当するようになったが、先生方が書かれた破産管財実践マニュアルはよく参考にさせてもらっています。」と言ってもらいました。
管財事件を担当している若手の先生からは「参考にさせてもらっています」との声をかけられることが多いのですが、裁判所の書記官方にも使っていただいていることを聞き嬉しく思いました。
前橋地裁で倒産事件を担当してる裁判官と主任書記官の方は以前、千葉地裁の民事4部(破産再生係)で管財事件を一緒に担当してことがあり、久しぶりの再会となりました。
裁判官からは「石川先生、経験を積まれてかなり力をつけられましたね。」と大変嬉しい言葉もかけていただきましたが、経験も実力も無く、勢いだけで管財事件を担当していたあの頃を思い出してちょっと恥ずかしい気もしました。
今後も精進して、少しでも多くの経験をこのブログや破産管財実践マニュアルの改訂版で提供していきたいと思います。

明治時代の書式集

国立国会図書館は、「近代デジタルライブラリー」として、所蔵の書籍をスキャンして画像化しています
既に57万冊が画像化され、うち24万冊がネットで公開されています。


倒産関係でどのようなものがあるかな、と思って見てみると、樋山広業著「会社手形破産法書式文例」(岡島幸次郎発行・明治26年)というのがありました。
この当時から書式集があったんですね。

園尾隆司判事の「民事訴訟・執行・破産の近現代史」(弘文堂)248頁によれば、明治23年3月27日に商法第三編破産が制定されています。
この施行の準備として著されたものかもしれません。

ちょうど、現行破産法の施行にあわせて、大阪地方裁判所・大阪弁護士会破産管財運用検討プロジェクトチームが「破産管財手続の運用と書式」(新日本法規)を編んだのと同じようなものですね。

書式には、自己破産的な「支払停止御届」と債権者申立的な「支払停止に付申立書」というのがありました(いずれも、本来は旧字・旧かな。必要に応じて句読点を補っています。以下同じ。)。

後者を引用してみます。
意味は十分わかりますね。


 支払停止に付申立書

   何所何商
  申立人   何  某
   何所何商
  被申立人  何  某

右何某申立候。被申立人何某義、自分に対して何々代金何百何十円支払をなすべ
き筈、去月三十一日請求致候処、支払を致さず。且、聞く処に依れば、何某は、其
後何れか罷越不在の旨相答え、其実逃走致候様にて、巳に支払停止仕候義と奉在
候に付、何卒破産の御宣告相成度此段申候成。

   右

年月日   申立人  何  某 印

  何地方裁判所長判事何某殿





2012年2月18日土曜日

保全・執行・否認請求と許可申請

訴額が100万円を超える訴えの提起には裁判所の許可が必要ですが、強制執行では必要ありません。
しかし、保全では必要とされているんですね(「条解破産法」594頁、「大コンメンタール破産法」337頁、「基本法コンメンタール破産法」257頁)。

破産法上の保全は手続をとったことがありますが、通常の保全はないので、実務がどうなっているのかがわかりません。


なお、否認請求にも裁判所の許可が必要とされていますが(「条解破産法」1116頁)、破産裁判所が審理するので(破産法173条2項)、黙示の許可があったものとして扱っているようです。

このため、実務上、否認請求には許可申請が不要、ということになっています(破産管財実践マニュアル」215頁)。

2012年2月17日金曜日

住宅ローンのみの個人再生

住宅ローンしか債務がない人が、住宅資金特別条項を利用した個人再生を申し立てることも可能です(「個人再生の実務Q&A100問」152頁)。

この場合、住宅ローン以外の再生債権者は存在しません。
しかし、再生計画案には、通常のケースと同じく、再生債権に対する権利変更の一般的基準を記載することが必要です(ただし、免除率は0%)。

法律上記載が要求されている(民事再生法154条1項1号、156条。ただし、個人再生では、238条は157条の適用を除外していて、再生債権者事の個別条項の記載は不要。)ことに加え、後で債務が発見された場合に意味を持ちうるからです(民事再生法232条3項ただし書き。)。

もっとも、弁済計画表には書くことがありませんので、提出する意味はないでしょう。
民事再生規則130条の2は、弁済計画表の提出を必要的とはしていません。

2012年2月16日木曜日

根抵当権と住宅資金特別条項

住宅ローンに設定されるのは、通常は抵当権です。
しかし、まれにフリーローンを利用してリフォームを行っていて、不動産には根抵当権が設定されていることがあります。

このような場合も、住宅資金特別条項の利用は可能です(「条解民事再生法」920頁、「一問一答個人再生手続」84頁)。

もっとも、被担保債権が住宅ローン(リフォームローン含む)だけであることが必要です。
申立てに際しては、金融機関から借入れの履歴開示を受け、その使途をリフォームなどの契約書で説明していくことになるでしょう。

続々 書名の候補

新宅さん、懐かしい話をありがとうございます。
アバンザのジュンク堂でいろんなジャンルの棚を眺めながら、案を出し合ったこともありましたね。

 3人共が「実践」を入れた案も出していましたが、今の書名はリストアップした中にはありませんでした。

 毎日、ああだこうだと考えていた中で、ふと思いついたのが、『破産管財実践マニュアル』、略称「実践マニュアル」でした。

 いい名前だなあ、と今でも思います。

2012年2月15日水曜日

続 書名の候補

ファイルを見返してみました。
30どころじゃないですね。

当初、候補は154(!)ありました。

しかも、「破産管財実践マニュアル」という候補はどこにも出てきません…



書名の候補

「破産管財実践マニュアル」の書名候補は30弱ありました。
私が最初に提案したのは、次の6つでした。

  • 実践破産管財人
  • 破産管財マニュアル
  • 破産管財プラクティス
  • 破産管財の手引き
  • 破産管財実務序説
  • 破産管財実務方法論
4つめは、その後某所から出版されてますね。

かわったものとしては、「管財万華鏡」とか「管財人の宝箱」という候補もありました。
これらにしなくてよかったなぁ…と思います。
(提案者の方、すみません…)

2012年2月13日月曜日

管財事件の管轄

法人と代表者の自己破産を申し立てるときに、法人の土地管轄と代表者の土地管轄が異なることがあります。

法人の本店所在地がある裁判所に代表者の申立てもできることと比較して、代表者の住所所在地に法人の申立てができることはあまり認識されていないようです(破産法5条6項、民事訴訟法4条2項)。

なお、破産法5条6項は、管轄がある方の申立てが先行することを要するようにも読めますが、同時申立てでも問題はないとされています。

また、「住所」と住民票所在地は必ずしも一致するものではなく、住民票がなくても住所に該当する場合も、逆の場合もあります。

2012年2月11日土曜日

全倒ネット

全国倒産処理弁護士ネットワーク
通称「全倒ネット」
弁護士として、倒産処理に携わっていきたいと考えている人で、まだ加入していない人は是非とも加入してください。
「全倒ネット」のHPから加入の手続きがとれます。
また、メーリングリストにも登録していただき、質問・回答・体験談等をどしどし発言していただければと思います。

また、全倒ネットでは各地区毎に研修会を行っています。
関東地区では年に3回くらいのペースで研修会を開催しています。
2月4日が甲府でした。
次回は7月7日千葉で開催する予定で準備しています。

退職金の4分の3(3)

そうですね。小規模企業共済が99万円を一定程度超えても、他の財産の自由財産拡張を認めていますからね。
今回の指摘は、退職金の4分の3(さらに言えば、8分の7)については、自由財産拡張の場面では考慮しないという点を強調したかったのですよ。

退職金の4分の3(2)


同じ本来的自由財産でも、4分の3は将来債権にすぎないので、99万円枠との関係では考慮せず、解約可能な小規模企業共済では考慮すること少なくないということだろうと考えています。
ただ、小規模企業共済だけで99万円を超えても、他の財産の自由財産拡張を認めない、ということはないのでしょう。

退職金の4分の3

退職金の差押禁止部分の4分の3は、将来の請求権としての評価も0としているのですよね。
小規模企業共済は、解約するとすぐ換金できる点を考慮しやすくなりますが。

行間を読む!

『破産管財実践マニュアル』をよく利用されている方は、経験を積むにつれ、行間を読めるようになってくると思います。それが本当にわかっていただきたいところなんですよね。

甲府研修会

2月4日 全倒ネットの研修会が甲府でありました。
初めてパネラーを担当しました。
今回は甲府地裁の林裁判官にもパネラーに加わっていただきましたが、裁判官の考え方を知ることができて大変参考になりました。
私の他に弁護士は一弁の伊藤尚先生と山梨の吉澤先生でした。
伊藤尚先生は日頃から全倒ネットの理事会などでいろいろと教えていただいていますが、吉澤先生も山梨では倒産事件を多数手がけていて、地元のロースクールでも倒産法を教えているとのことであり、参考になる話がたくさんあり、刺激を受けました。
テーマは初めての法人破産申立でした。
後日、パネルディスカッションの内容を報告したと思います。

ご挨拶

ブログ始めます。
どうぞよろしくお願いします。

ブログ開設

「破産管財実践マニュアル」の執筆者3名によるブログを開設しました。
よろしくお願いいたします。